実は、昨年末からいわゆる四十肩(最近では五十肩の方がメジャーな言い方っぽい)の症状があり、リハビリをしています。病院には2~3か月通い、大分動くようになりましたが完治までは時間がかかりそうで、自宅でリハビリに切り替えました。リハビリを通して筋肉や骨などの解剖学的な分野について学びました。これって四十肩でなくても体づくりを行う上で十分に意味のある健康に関する知識になると思ったので、子ども達にもわかりやすく伝えていこうと思います。
そもそも肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)とは?
肩関節周囲炎というのは総称で、その名の通り、肩関節の周囲で起こる炎症によって痛みが出るものです。痛みの程度はその炎症の程度にもよりますし、どの場所に炎症が起こっているのかによって痛む場所も変わってきます。私の場合は三角筋あたりが痛んでいました。(後刻、分析してみると、肩甲骨を外転して腕を上げる時が一番痛みました)
関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して肩関節の周囲に組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。肩関節の動きをよくする袋(肩峰下滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります(拘縮または凍結肩)。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html
肩関節(shoulder joint)の構造
肩関節は複雑な構造で、色々な骨と筋肉から構成されています。それらのどこで炎症が発生しているかによって痛む部位は異なりますし、その原因として、どこが固まり動かなくなっているか、そのためどこを無理やり動かしているかによっても炎症の発生部位は変わるだろうということです。
肩関節と言われるのは、一般的に肩甲上腕関節を指しますが、これは狭義の肩関節とされています。広義の肩関節は、肩甲上腕関節に加え、いくつかの解剖学的関節(繊維膜や滑膜などの関節包が存在する関節)と機能的関節(機能上、関節のような役割をするもの)を合わせ、肩関節複合体と呼ばれることもあります。ここでの分類は学術的なものなのでそこまで気にすることはありませんが、文献によっては英語になってますので、英語も合わせて記載しています。
解剖学的関節(Anatomical Joint)
- 肩甲上腕関節(GlenoHumerral(GH) Joint)・・・最初にイメージする、いわゆる肩関節
- 肩鎖関節(AcromioClavicular(AC)Joint)・・・肩甲骨と鎖骨をつなぐ関節
- 胸鎖関節(SternoClavicular(SC)Joint)・・・胸骨と鎖骨をつなぐ関節
機能的関節(Physiological Joint)
- 肩甲胸郭関節(ScapuloThoracic Joint)・・・胸郭背面と肩甲骨前面が筋肉や鎖骨を介して連結
- 第2肩関節(肩峰下関節)(Subacrominal Bursa)
・・・肩甲骨の肩峰と上腕骨の間の滑液包(肩峰下滑液包)
(通常、上記の5つの関節を言いますが、以下も肩関節に含めることがあります)
- 烏口鎖骨間メカニズム(C-C(烏口突起(Coracoid)と鎖骨(Clavicle)) Mechanism)
・・・烏口鎖骨靭帯による肩鎖関節と胸鎖関節の運動調節機能
一番重要だと思われる肩甲骨(scapula)
肩関節周囲炎の原因というか予防においてはさまざまな筋肉、骨を意識する必要があります。その中でも個人的に重要だと思われるのが「肩甲骨(Scapula)」です。これまでの私の肩甲骨の認識は、背中の上方にあるでっぱった骨ぐらいのものでした。しかし、実は、肩を動かす上で「肩甲上腕リズム」と呼ばれるものを構成するなど重要な役割を果たしています。ちまたには肩甲骨剥がしや、肩甲骨ストレッチなどの情報が溢れかえっていますが、裏を返せばそれだけ重要な部分なのだと思います。
その理由について考察すると、上記で示した肩関節を構成する肩複合体のうち、ほとんど肩甲骨が関与しているということです。
肩甲骨から構成される関節
そこで、肩甲骨から構成される関節をみると、まずは解剖学的関節として、以下の関節があります。
- 肩甲上腕関節(GlenoHumerral(GH) Joint)・・・肩甲骨-上腕骨
- 肩鎖関節(AcromioClavicular(AC)Joint)・・・肩甲骨-鎖骨
次に機能的関節です。
- 肩甲胸郭関節(ScapuloThoracic Joint)・・・肩甲骨-胸郭
- 第2肩関節(肩峰下関節)(Subacrominal Bursa)
・・・肩甲骨(肩峰)-肩峰下滑液包・棘上筋(腱)-上腕骨 - 烏口鎖骨間メカニズム(C-C(烏口突起(Coracoid)と鎖骨(Clavicle)) Mechanism)
・・・烏口突起-鎖骨
肩関節のほぼすべてに肩甲骨が関わっているため、ここを中心に対策を考えるのが一番早く治療ができるのではないかと考えます。
関節の構造
ここまででも、さらりと肩関節を解剖学的関節、機能的関節と分類していましたが、そもそも関節の構造とはどのようなものでしょうか。
解剖学的関節の基本的な構造
解剖学的関節の基本的な構造としては、骨の連結部分が関節包(繊維膜<外層>、滑膜<内層>)に包まれており、その内部には関節腔という隙間があり、潤滑油の働きを持つ滑液で満たされています。向かい合う骨は関節軟骨で被われています。
名称 | 役割 |
関節包(繊維膜)(fibrous mumbrane) | 骨の表面を覆う結合組織(骨膜)の続きで、関節包の外層を形成する膜。密結合組織 |
関節包(滑膜)(synovium) | 関節包の内層を形成する膜。滑液を分泌し、関節の動きを潤滑にし、関節軟骨に栄養を与える。 |
関節腔(articular cavity) | 関節包に覆われた隙間。滑液で満たされている。 |
関節軟骨(joint cartilage) | 関節腔に面する骨表面を覆う軟骨。骨同士が接触するときの衝撃を緩和したりする。 |
関節頭(articular head) | 関節の凸部分 |
関節窩(articular fossa) | 関節の凹部分 |
関節の補助装置(靱帯)
関節を強固で安定的なものにするために靭帯(ligament)があります。靭帯とは、主に関節包の外側に存在し、骨と骨を結ぶことにより、関節の可動域を制限したり、関節の安定性を高めます。
これとよく似たもので、腱板がありますが、こちらは筋肉と骨を
拘縮(contracture)について
肩関節周囲炎についてはざっくりとした病名であるため、正確にどこが悪いかはわかりにくいですが、結果として発生しているのは、腱板炎、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎、癒着性肩関節包炎など様々です。症状がひどくなると、拘縮(contracture)という言葉がつかわれます。肩関節拘縮では関節包が厚くなり、伸びにくくなります。これを癒着と呼んでいます。
関節拘縮(articular contracture)
関節構成体軟部組織の損傷後の瘢痕癒着や不動による廃用性変化の1つで,関節包,靱帯などを含む軟部組織が短縮し,関節可動域に制限がある状態である。 長期間の固定などにより,筋や皮膚などに原因がある場合は短縮(tightness)とよび,伸張運動により改善する。 関節包内の骨・軟骨に原因があり,関節機能がない場合は強直(ankylosis)とよび区別され,伸張運動の効果は認められない。
一般社団法人 日本褥瘡学会 http://www.jspu.org/jpn/journal/yougo.html
ちなみに、炎症の発生から拘縮するまでの過程は、炎症期、拘縮期、回復期の3段階に分けられています。そのため、肩峰下滑液包炎や腱板炎などが生じた場合、炎症してすぐに癒着が生じず、炎症の修復過程で肩峰下滑液包や腱板は癒着するといわれています。
まとめ
ここまでで骨と関節を中心に肩関節の構造についてまとめてみました。次は肩関節を構成する筋肉について記載していけたらと思います。私個人の状況としては、MRIまで撮って肩関節周囲炎の診断と矛盾しないと記載されていたので間違いないと思いますが、拘縮までは至ってなかったと思います。ただ、未だに最後まで腕を上げると痛いため、保険診療の効く針灸院へ行ってアドバイスをもらいながらもう少し治療してみようかと検討中です。目標はレイアップシュートで痛みがでないこと、鉄棒にぶら下がって子供に鉄棒を教えてあげること!です。
参考文献